「実家を兄弟3人の共有名義で相続したが、売却に反対する兄がいて話が進まない」
「共有名義の家の固定資産税や管理の負担だけ続いていて、自分の持分だけでも手放したい」
「持分だけ売れると聞いたけれど、いくらになるのか、後でもめないか不安」
相続をきっかけに家が共有名義になり、共有者間で意見がまとまらずに空き家のまま放置される——これは非常によくあるパターンです。
結論から言うと、家全体を売るには共有者全員の同意が必要ですが、自分の共有持分だけなら他の共有者の同意なしに売却できます。この記事では、共有名義の家を売る4つの方法、持分だけ売る場合の相場の目安、他の共有者とトラブルにならないための注意点を分かりやすく解説します。
なぜ共有名義の家は「売れない」状態に陥りやすいのか
共有名義とは、1つの不動産を複数人が持分割合(2分の1、3分の1など)で所有している状態です。相続で兄弟姉妹が実家を共同相続したケースが典型で、次のような理由で身動きが取れなくなりがちです。
- 家全体の売却(処分行為)には共有者全員の同意が必要。1人でも反対すれば売れない
- 「思い出の家を売りたくない」「時期が悪い」など、共有者ごとに事情や温度感が違う
- 共有者の1人が認知症になったり、相続を重ねて共有者が増えたりして、話し合い自体が困難になる
- 誰も住まないのに固定資産税や管理の負担だけが続く
なお、共有名義でも自分の持分の範囲でできることはあります。修繕などの保存行為は単独で可能、短期の賃貸などの管理行為は持分価格の過半数の同意で可能とされています。ただし売却となると全員の同意が原則です。
放置された共有名義の家も、管理が行き届かなければ空き家としての放置リスク(特定空家指定による固定資産税増額など)を抱える点は単独名義の家と同じです。
共有名義の家を売る4つの方法
| 方法 | 同意 | 価格水準 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 1. 全員合意で家ごと売却 | 全員必要 | 市場価格 | 共有者間で話がまとまる |
| 2. 持分を他の共有者に売却 | 相手との合意のみ | 交渉次第 | 買い取る資力のある共有者がいる |
| 3. 持分を専門買取業者に売却 | 不要(単独可) | 市場価格×持分の5〜7割目安 | 話し合いが決裂・関わりたくない |
| 4. 共有物分割請求 | 不要(法的手続き) | 手続き次第 | 協議では解決できない |
方法1:共有者全員の合意で家ごと売却する
**最も高く売れる可能性があるのはこの方法です。**家全体を市場価格で売却し、売却代金を持分割合に応じて分配します。まずは全員合意を目指して話し合うのが基本です。査定額という客観的な数字があると話し合いが進みやすいため、先に複数社の査定を取ってから協議するのがおすすめです。
方法2:自分の持分を他の共有者に売却する
同居している兄弟など、その家を使い続けたい共有者がいるなら、その人に持分を買い取ってもらう方法です。当事者間の合意だけで完結し、外部に不動産が渡らないため円満に解決しやすい一方、価格が相場より低く抑えられがちな点、親族間売買では著しく安い価格だと贈与税の対象になる場合がある点に注意が必要です。
方法3:自分の持分だけを専門買取業者に売却する
民法上、共有持分の処分は各共有者の自由とされており、自分の持分だけなら他の共有者の同意なしに第三者へ売却できます。ただし、持分だけを欲しがる一般の買主はほとんどいないため、実際の売却先は共有持分を専門に扱う買取業者が中心になります。他の共有者と顔を合わせずに現金化でき、話し合いが完全に決裂している場合の現実的な出口です。
方法4:共有物分割請求で法的に共有状態を解消する
各共有者は、原則としていつでも共有物の分割を請求できます(民法256条)。協議がまとまらなければ調停や訴訟に進み、裁判所は一般に次のいずれかの方法で分割を決めます。
- 現物分割: 土地を物理的に分ける(建物付きでは難しいことが多い)
- 賠償分割(代償分割): 特定の共有者が他の持分を金銭で買い取る
- 換価分割: 競売等で売却して代金を分ける
確実に共有状態を解消できる反面、訴訟には弁護士費用と1年前後かかる場合もある時間的負担があり、競売になると一般に市場価格より安くなりやすい点がデメリットです。
持分だけ売る場合の相場|市場価格×持分割合の5〜7割が目安
持分売却で最も誤解されやすいのが価格です。例えば市場価格3,000万円の家の持分3分の1でも、単純計算の1,000万円では売れません。
持分のみの買取価格は、一般に「市場価格×持分割合」のさらに5〜7割程度が目安とされています。上の例なら1,000万円×5〜7割=500万〜700万円程度というイメージです。
安くなる理由は明確で、買い取った業者は単独では家を自由に使えず、その後に他の共有者との交渉や分割手続きのコストとリスクを負うためです。
相場に関する注意点
- 買取価格は物件の立地・持分割合・他の共有者の状況によって大きく変動します。必ず複数の業者に査定を依頼して比較してください
- 相場を大きく下回る価格を提示し、即決を迫る業者には注意が必要です
- 持分売却でも譲渡所得が出れば翌年の確定申告が必要になる場合があります
他の共有者とトラブルにならないための注意点
持分のみの売却は法律上は単独でできますが、売却後は第三者(買取業者)が新たな共有者になるという現実は理解しておく必要があります。
- 買主となった業者は、他の共有者に対して持分の買取交渉や共有物分割請求を行うのが一般的です。他の共有者にとっては「知らない会社が突然共有者になった」状態になり、親族関係が悪化するおそれがあります
- そのため、持分だけの売却は最後の手段と位置づけ、まずは全員合意での売却や共有者間の買取を打診するのが鉄則です
- それでも売却する場合は、事前に「持分を売却するつもりだ」と一言伝えておくだけでも、後々のトラブルはかなり抑えられます
- 周囲や親族に知られずに手放したい事情がある場合は、秘密厳守で売却を進める方法も参考にしてください
共有持分に対応できる専門買取業者の選び方
共有持分は権利関係の調整が必要な特殊な取引のため、一般の不動産会社では断られることも珍しくありません。業者選びでは次の点を確認しましょう。
- 共有持分・訳あり物件の買取実績が具体的に確認できるか
- 宅地建物取引業の免許番号を掲示しているか
- 査定額の根拠を説明してくれるか(即決を迫らないか)
- 他の共有者への対応方針(強引な交渉をしない方針か)を説明してくれるか
- 秘密厳守・現状のままでの買取に対応しているか
繰り返しになりますが、査定は必ず複数社に依頼してください。持分買取は業者による価格差が特に大きい分野です。
まとめ
- 家全体の売却には共有者全員の同意が必要だが、自分の持分だけなら単独で売却できる
- 売る方法は「全員合意で売却」「共有者への売却」「専門業者への持分売却」「共有物分割請求」の4つ。最も高く売れるのは全員合意での売却
- 持分のみの買取相場は市場価格×持分割合の5〜7割程度が目安
- 持分売却後は業者が新たな共有者になるため、まずは共有者間の話し合いを尽くし、売却の意思は事前に伝えておく
共有名義のまま放置しても、税金と管理の負担、そして共有者が増えて問題が複雑化するリスクが積み上がるだけです。まずは現状のままで構いませんので、共有持分に対応できる専門の買取業者を含む複数社に査定を依頼し、「自分の持分がいくらになるのか」を把握することから始めてみてください。
