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大阪市の空き家解体補助金|令和8年度の対象地区・上限額・申請の流れ

「大阪市にある実家が空き家のままで、建物も古い。解体したいが費用が重く、市の補助金が使えると聞いたものの、自分の家が対象か分からない」

大阪市には、狭い道路に面した古い木造住宅の解体費を補助する狭あい道路沿道老朽住宅除却促進制度があります。ただし「大阪市内の空き家なら使える」制度ではありません。対象は町丁単位で指定されたエリアに限られ、建築年の要件も地区によって30年以上違います。

この記事では、大阪市が公開している「令和8年度版 補助金申請の手引き」(Ver.2026.04)をもとに、対象の要件・上限額・申請の順番を整理します。


狭あい道路沿道老朽住宅除却促進制度とは

大阪市の手引きによると、この制度の目的は密集住宅市街地における防災性の向上です。建物が古く建て詰まっていて、狭い道路が多く、公園やオープンスペースが不足している地域で、老朽木造住宅の解体費の一部を補助します。大阪市はこうした密集住宅市街地のうち、重点対策地区を約210ヘクタール、対策地区を約3,800ヘクタール指定しています。

補助の対象エリアは、令和8年度版の手引きで町丁名まで一覧になっています。掲載されているのは、淀川区・旭区・都島区・福島区・鶴見区・城東区・天王寺区・東成区・生野区(生野区南部地区を含む)・大正区・阿倍野区・西成区・平野区・東住吉区・住吉区・住之江区の16区です。

ただし、これらの区の全域が対象ではありません。たとえば大正区は「三軒家西1丁目(5〜27番、JR環状線以南)、三軒家西2〜3丁目」のように、丁目や番地まで区切られています。自分の家が入るかどうかは、手引き巻末(P.44・45)の一覧と位置図で確認するのが確実です。

「対策地区」と「重点対策地区」で要件がまったく違う

対象エリアは2種類に分かれていて、敷地が面する道路の幅と、建物の建築年の両方で判定されます。

対象エリア敷地が面する道路建築年
対策地区幅員4m未満昭和25年以前
重点対策地区幅員6m未満昭和56年5月31日以前

ここが最大のポイントです。**対策地区の建築年要件は「昭和25年(1950年)以前」**で、戦後まもなくまでに建てられた家に限られます。一方、重点対策地区は「昭和56年5月31日以前」、つまり旧耐震基準の時代に建てられた家が広く入ります。

そのほか、手引きに書かれている主な要件は次のとおりです。

  • 対象は木造住宅。上表の建築年以前に建てられた部分のみが補助の対象
  • 店舗・事務所などとの併用住宅は、床面積の1/2以上が住宅であること
  • 敷地が面する道路の種別が限定される(対策地区は建築基準法第42条第2項・附則第5項の道路、重点対策地区は同法第42条・附則第5項の道路)
  • 重点対策地区では、昭和56年6月1日以降に増築・改築した部分は対象外
  • 解体後の用途は問わない(更地にして売っても補助の対象になり得ます)

申請できるのは、建物所有者(所有者が複数いる場合は他の所有者全員の承諾が必要)、土地の所有権や地上権・賃借権などを持つ人、またはそれらの人の配偶者・一親等内の親族です。いずれの場合も建物所有者全員の承諾が条件になります。

補助率と上限額(令和8年度)

令和8年度の補助率と補助限度額は次のとおりです。重点対策地区は、手引きの対象エリア一覧で「下線」か「二重下線」のどちらに該当するかで内容が変わります。

区分対策地区重点対策地区(下線部)重点対策地区(二重下線部)
補助率1/24/52/3
補助限度額(戸建)105万円/戸170万円/戸100万円/棟
補助限度額(集合)80万円/戸125万円/戸200万円/棟
限度額単価2.7万円/㎡2.7万円/㎡戸建1.7万円/㎡・集合1.5万円/㎡

補助額は次の3つのうち最も低い額(千円未満切捨)になります。

  1. 補助対象面積 × 限度額単価 × 補助率(面積は固定資産(家屋)評価証明書の床面積)
  2. 補助対象となる見積金額(消費税抜き)× 補助率(建物解体費と整地費の合計)
  3. 補助限度額

手引きに載っている算定例を見ると、実際の感覚がつかめます。対策地区内で、補助対象面積60㎡の戸建住宅を、解体・整地費の見積200万円で解体する場合です。

  • ① 60㎡ × 27,000円/㎡ × 1/2 = 810,000円
  • ② 200万円 × 1/2 = 1,000,000円
  • ③ 補助限度額 1,050,000円

この3つのうち最も低い①の81万円が補助額です。上限の105万円が出るわけではなく、床面積で決まる①が効くことが多い点に注意してください。壁面の補修費、屋内の動産撤去費、消費税は補助の対象外です。解体費の相場や見積もりの見方は空き家の解体費用の内訳と相場で解説しています。

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データで見る:補助が効くかは「重点対策地区かどうか」でほぼ決まる

「昭和25年以前」と「昭和56年5月31日以前」。この30年の差がどれほど大きいかを、実際の取引データで確認してみます。

国土交通省「不動産取引価格情報」の2021〜2025年のデータから、補助対象エリアを含む大阪市の9区について、一戸建て(土地と建物)の取引を集計しました。

区取引件数価格の中央値1981年以前築の割合1950年以前築の件数
生野区408件1,850万円24%3件
西成区350件2,050万円25%2件
東成区198件2,200万円30%2件
平野区389件2,400万円28%0件
住吉区407件2,500万円37%0件
城東区250件3,000万円26%0件
東住吉区490件3,050万円29%2件
旭区268件3,100万円23%2件
阿倍野区289件3,500万円25%1件

※割合・件数は建築年が記録されている取引をもとに算出。9区合計で取引3,049件、価格の中央値は2,600万円です。

9区を合計すると、建築年が分かる2,498件のうち**1981年以前に建てられた家は約28%**を占めるのに対し、**1950年(昭和25年)以前はわずか12件、0.5%**でした。

つまり、対策地区の「昭和25年以前」という要件に当てはまる家は、市場に出てくる物件のなかではごく少数です。実務的には、手厚い補助(補助率4/5・戸建170万円/戸)を受けられるかは「重点対策地区に入っているか」でほぼ決まると考えて差し支えありません。建築年より先に、自分の家の町丁が重点対策地区かどうかを確認するのが近道です。

区ごとの相場や取引の傾向は、生野区の空き家売却相場や東成区の空き家売却相場で確認できます。

令和9年度から対象エリアの指定が変わる地区がある

もうひとつ、時期に関わる注意点があります。令和8年度版の手引きの位置図には、令和9年度より補助対象エリアの指定が変わる地区が色分けで示されています。該当するのは東成区・生野区・阿倍野区の一部の町丁で、重点対策地区から対策地区に変わる予定です。

手引きには「変更に伴い、補助の内容や要件、補助限度額等が変わる可能性があります」と注記されています。該当する町丁に家がある場合、判断を先延ばしにすると条件が変わることがあるため、早めに窓口で確認しておくほうが安全です。

申請の流れと期限:契約の順番を間違えると補助はゼロ

この制度でいちばん多い取り違えは、手続きの順番です。

補助金の交付を申請する前に除却工事の契約を行った場合、補助金を受けることができなくなります。(令和8年度版 手引き「注意事項」)

解体業者と契約してから市に申請する、という順番では補助を受けられません。令和8年度の流れと期限は次のとおりです。

手順内容期限(令和8年度)
① 事前相談固定資産(家屋)評価証明書、建物の外観写真などを用意して窓口へ-
② 補助金の交付申請工事契約予定日の40日前まで令和8年12月28日(月)まで
交付決定通知申請から40日以内に通知(書類訂正の期間を除く)-
工事契約・除却工事交付決定通知を受けた後に契約する-
③ 完了報告事業期間内に提出令和9年2月26日(金)まで
④ 補助金の請求額の確定通知の後に請求令和9年4月30日(金)まで
入金請求書の提出から30日以内に指定口座へ-

すでに工事契約を結んでいても、工事に着手していないことを証明でき、工事着手予定日の40日前までであれば交付申請できる特例措置があります。この場合は交付決定通知を受けた後に着手する必要があり、工事着手届の提出も求められます。

もうひとつ見落としやすいのが予算です。手引きには「各年度の予算の範囲内で補助します。よって、予算執行の状況により、年度途中であっても、補助申請の受付を終了することがあります」と明記されています。12月28日という期限まで余裕があるように見えても、受付が先に締め切られる可能性があります。

窓口は大阪市都市整備局 耐震・密集市街地整備 受付窓口(大阪市立住まい情報センター4階5番窓口)、大阪市北区天神橋6丁目4-20、電話06-6882-7053です。

解体すると固定資産税の住宅用地特例が外れる

補助金が出るからといって、解体が常に得とは限りません。見落とされやすいのが固定資産税です。

大阪市の説明によると、住宅の敷地である住宅用地には課税標準の特例措置があり、小規模住宅用地(住宅1戸あたり200㎡以下の部分)は固定資産税の課税標準額が価格の6分の1(都市計画税は3分の1)、一般住宅用地(200㎡を超える部分)は3分の1(都市計画税は3分の2)になります。

この特例は「住宅の敷地」であることが前提なので、建物を解体して更地にすると適用されなくなり、土地の固定資産税は上がります。大阪市では、住宅を取り壊した場合に住宅用地申告書の提出が必要とされています。

補助金で解体費の負担が軽くなっても、更地のまま売れない期間が長引けば、上がった固定資産税を払い続けることになります。解体を決める前に、解体費から補助額を引いた実質負担と、更地にした場合の固定資産税の増加分、買い手が現れるまでの見込み期間をセットで考えておきたいところです。くわしくは空き家を放置したときの固定資産税のリスクで解説しています。

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解体せずに売る・活かす選択肢も比べる

密集市街地の古い家は、更地にすると道路幅の関係で建て替えがしにくく、かえって買い手が限られることがあります。解体を決める前に、次の選択肢とも比べてみてください。

現況のまま売る

建物を残したまま売れば、解体費も固定資産税の増加も発生しません。前述のデータのとおり、生野区や西成区では価格の中央値が2,000万円前後で、1981年以前に建てられた家が取引の4分の1を占めています。築古の家も実際に動いている市場です。売却後の手取りの計算は空き家を売ると手元にいくら残るかを参考にしてください。

相続した家なら「空き家の3,000万円特別控除」を確認する

相続した家を売る場合、国税庁の「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」を使える可能性があります。主な要件は、昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、令和9年12月31日までの譲渡であることなどです。家屋を取り壊して土地だけを売る場合も対象になり得ます。なお令和6年1月1日以後の譲渡では、相続人が3人以上いる場合の控除額は2,000万円です。要件が細かいため、適用の可否は税務署や税理士に確認してください。

改修して活かす(空家利活用改修補助制度)

大阪市には、解体ではなく改修を支援する空家利活用改修補助制度もあります。令和8年度は、平成12年5月31日以前に建築された戸建または長屋建の住宅で、3か月以上空家になっているものが対象です。住宅再生型では性能向上改修工事に1/2・上限75万円、耐震改修工事に1/2・上限115万円、地域まちづくり型では地域まちづくり改修工事に1/2・上限300万円などの補助があり、申請の締切は補助内容により令和8年12月15日(火)または12月28日(月)です。

大阪府内の他の市町村の制度や相場は大阪府の空き家売却ガイドから確認できます。

よくある質問

Q. 大阪市内の空き家なら、どこでも解体補助金を使えますか?
A. 使えません。対象は令和8年度版の手引きに町丁名まで一覧で示された対象エリア内に限られ、さらに敷地が面する道路の幅員と建築年の要件を満たす木造住宅である必要があります。

Q. 補助の上限いっぱいまでもらえますか?
A. 上限額がそのまま支給されるわけではありません。「補助対象面積×限度額単価×補助率」「見積金額(税抜)×補助率」「補助限度額」の3つのうち最も低い額になります。手引きの算定例では、対策地区の60㎡の戸建で補助額は81万円でした。

Q. もう解体業者と契約してしまいました。補助は受けられますか?
A. 原則として、交付申請の前に工事契約を行うと補助を受けられません。ただし、工事に着手していないことを証明でき、工事着手予定日の40日前までであれば交付申請できる特例措置があります。着工する前に窓口へ相談してください。

Q. 解体して更地にすれば売りやすくなりますか?
A. 一概には言えません。更地にすると固定資産税の住宅用地特例が外れて税負担が上がります。また狭い道路に面した敷地では、更地にしても建て替えに制約が残ることがあります。解体前に、現況のまま売った場合の査定額と比べて判断するのが安全です。なお令和8年度の申請期限は、交付申請が12月28日(月)、完了報告が令和9年2月26日(金)、補助金の請求が令和9年4月30日(金)までですが、予算の範囲内のため年度途中で受付が終了することがあります。

まとめ

  • 大阪市の狭あい道路沿道老朽住宅除却促進制度は、町丁単位で指定された対象エリア内の老朽木造住宅が対象(令和8年度)
  • 対策地区は「幅員4m未満の道路・昭和25年以前築」で補助率1/2・戸建105万円/戸、重点対策地区は「幅員6m未満・昭和56年5月31日以前築」で補助率4/5・戸建170万円/戸(二重下線部は2/3・100万円/棟)
  • 国交省データでは、対象9区の取引のうち1950年以前築は0.5%にとどまる。手厚い補助が使えるかは重点対策地区かどうかでほぼ決まる
  • 東成区・生野区・阿倍野区の一部は令和9年度から指定が変わる予定で、補助の内容や限度額が変わる可能性がある
  • 交付決定通知を受ける前に工事契約をすると補助を受けられない。申請は令和8年12月28日まで、ただし予算の範囲内
  • 解体すると固定資産税の住宅用地特例(小規模住宅用地は価格の1/6)が外れる。現況のまま売る場合との比較をしてから決めたい

自分の家が対象エリアに入るか、どちらの地区に該当するかは、大阪市立住まい情報センターの窓口で確認できます。あわせて、解体せずに売った場合にいくらになるかも把握しておくと、補助金を使って解体するかどうかを数字で判断できます。個別の税の扱いは税務署や税理士、権利関係は司法書士にご確認ください。

参考にした公式情報

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