「神戸の実家が空き家のままになっている。建物が古いので解体を考えているが、市の補助金はいくら出るのか」
神戸市の老朽空家等解体補助制度は、他の自治体の解体補助とは設計がかなり違います。補助額が「解体費の何割」ではなく床面積で決まる定額であること、対象の建築時期が旧耐震基準の1981年ではなく1986年まで広いこと、そして門や塀、カーポート、庭木まで全部解体することが条件になっていることです。
この記事では、神戸市が公開している「2026年度(令和8年度)老朽空家等解体補助制度 申請手引き」(2026年4月1日発行)と市の公式ページをもとに、補助額・要件・期限を整理します。
補助額は「床面積で決まる定額」
神戸市の補助額は、解体する建物の登記床面積または課税床面積だけで決まります。解体費の見積もりが高くても安くても、同じ面積なら同じ額です。
| 登記床面積または課税床面積の合計 | 補助金額 |
|---|---|
| 30㎡未満 | 20万円 |
| 30㎡以上40㎡未満 | 30万円 |
| 40㎡以上50㎡未満 | 40万円 |
| 50㎡以上60㎡未満 | 45万円 |
| 60㎡以上70㎡未満 | 50万円 |
| 70㎡以上80㎡未満 | 55万円 |
| 80㎡以上 | 60万円 |
さらに、登記簿や課税台帳の用途が**「共同住宅」または「寄宿舎」で、床面積100㎡以上かつ3戸以上の住戸**がある場合は、別表が適用されて最大100万円になります。
| 床面積の合計 | 補助金額 |
|---|---|
| 100㎡以上110㎡未満 | 70万円 |
| 110㎡以上120㎡未満 | 75万円 |
| 120㎡以上130㎡未満 | 80万円 |
| 130㎡以上140㎡未満 | 85万円 |
| 140㎡以上150㎡未満 | 90万円 |
| 150㎡以上160㎡未満 | 95万円 |
| 160㎡以上 | 100万円 |
補助の対象になる費用は、解体工事見積書のうち空き家の解体費、門塀・立木竹等の除却費、アスベストの事前調査・除去工事などの経費です(消費税相当額は除く)。解体後のすきとり・残土処分、土地の舗装、建て替え工事の一部とみなされる経費は対象外です。また、表の補助金額が補助対象事業費を上回る場合は、補助対象事業費が上限になります。
神戸市内の解体費そのものの相場は空き家の解体費用の内訳と相場で解説しています。大阪市のように「補助率×床面積単価」で決まる制度とは考え方が異なるため、大阪市の空き家解体補助金の仕組みと比べてみると違いが分かりやすいはずです。
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対象は「1986年12月31日以前」。旧耐震より一回り広い
対象になるのは、神戸市内にある1986年(昭和61年)12月31日以前に建てられた建物で、腐朽・破損のある空き家です。住宅以外の用途も対象で、手引きでは「空き家」を居住その他の用に供していない建物と定義しています。
ここが神戸市の特徴です。解体補助の建築時期要件は「昭和56年5月31日以前」(旧耐震基準)とする自治体が多いのですが、神戸市はそれより5年半あとまで対象に含めています。
この差がどれくらいの広がりになるか、国土交通省「不動産取引価格情報」の2021〜2025年のデータで確かめてみました。神戸市9区の一戸建て(土地と建物)の取引を集計した結果です。
| 区 | 取引件数 | 価格の中央値 | 1986年以前築 | 1981年以前築 |
|---|---|---|---|---|
| 垂水区 | 875件 | 2,500万円 | 44% | 38% |
| 兵庫区 | 210件 | 1,800万円 | 42% | 37% |
| 長田区 | 329件 | 830万円 | 42% | 38% |
| 須磨区 | 527件 | 2,800万円 | 38% | 32% |
| 北区 | 973件 | 1,900万円 | 36% | 30% |
| 中央区 | 127件 | 3,500万円 | 32% | 26% |
| 西区 | 632件 | 2,500万円 | 29% | 20% |
| 灘区 | 353件 | 4,000万円 | 23% | 21% |
| 東灘区 | 423件 | 4,300万円 | 22% | 21% |
※割合は建築年が記録されている取引をもとに算出。9区合計で取引4,449件、価格の中央値は2,600万円です。
9区を合計すると、建築年が分かる4,314件のうち1986年以前築は35.1%、1981年以前築は29.7%でした。その差は5.4ポイント・234件分です。神戸市の基準なら、旧耐震基準で線を引く制度では対象外だった家も入ってくることになります。「うちは昭和50年代後半だから無理だろう」と思っていた方は、一度確認する価値があります。
築年数の古い家でも取引そのものは動いています。とくに長田区は価格の中央値が830万円、兵庫区は1,800万円と、解体費が売却価格に対して重くなりやすい水準です。解体するか現況のまま売るかの差が大きく出るエリアといえます。
「腐朽・破損」はどこを見られるのか
手引きでは、次の部位のいずれかに腐朽・破損の状態が目視で確認できることが要件とされています。
- 屋根:屋根ぶき材料の剥落・ずれ、屋根の変形など
- 軒・庇:落下・破損、軒天井材や垂木の腐朽・剥落など
- 外壁:剥落、落下の恐れのあるひび割れ、タイルや仕上げ材の浮き・孕み、金属系仕上げ材の腐食など
- バルコニー・屋外階段等:剥落・腐朽・破損、支柱や屋外階段の腐食など
- 基礎・土台・柱・梁:基礎の不同沈下やひび割れ、土台・柱・梁の腐朽や変形、柱の傾斜など
注意したいのは、コンクリート土間や外構(ブロック塀・擁壁等)のひび割れ・破損は要件の対象外とされている点です。塀だけが傷んでいても、建物本体に該当する状態がなければ要件を満たしません。
見落としやすい3つの条件
① 門・塀・カーポート・庭木まで全部解体する
補助の対象になる工事は、空き家本体だけではありません。手引きでは、敷地内の附属する建物、道に面する門・塀類、車庫・カーポート、敷地内の立木竹等を全て解体除却する工事と定義されています。
庭木が多い家や、ブロック塀とカーポートが残っている家では、見積もりがその分ふくらみます。補助額は面積で固定なので、増えた工事費はそのまま自己負担になります。見積もりを取るときは、最初からこの範囲で出してもらうのが安全です。
② 面積は「令和8年1月1日時点」の書類で決まる
補助額の根拠になる面積は、建物の登記事項証明書、固定資産課税台帳登録事項証明書、固定資産課税台帳の写し、課税明細書のいずれかに記載された床面積です。課税台帳系の書類は令和8年1月1日時点の面積で算定されます。これらの書類に記載のない別棟や増築部分の面積は算入されません。
さらに手引きには、全ての申請要件を満たしていても、これらの書類をいずれも提出できない場合は当該建物の床面積を0㎡として補助金額を算出すると書かれています。未登記の建物がある場合は、申請の前にすまいるネットへ相談しておきたいところです。
③ 交付決定を受ける前に契約・着工すると補助はゼロ
手引きの注意点にはこう書かれています。
必ず、補助金の交付決定を受けてから解体業者と契約及び工事の着手を行ってください。補助金の交付決定前に業者と契約や工事の着手を行った場合は補助を受けることができません。
業者に見積もりを頼んだ流れでそのまま契約してしまうと、補助は受けられません。順番を間違えないようにしてください。
期限と予算の状況(令和8年度)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請期間 | 2026年3月2日(月)〜2027年1月12日(火)※予算がなくなり次第終了 |
| 実績報告 | 工事完了・支払から30日以内。最終締切は2027年3月11日(木) |
| 申請窓口 | 神戸市すまいの総合窓口「すまいるネット」(神戸市長田区二葉町5丁目1-1 アスタくにづか5番館2階) |
| 予約・問い合わせ | 老朽空家解体補助専用ダイヤル 078-647-9969(10時〜17時、水曜・日曜・祝日定休) |
窓口は予約制です。また神戸市の公式ページでは、2026年9月末時点で予算上限額の64%に達していることが公表されており、予算上限に達し次第、先着順で受付を終了すると案内されています。申請期限まで日があるように見えても、予算のほうが先に尽きる可能性があります。
地区によっては、別の制度のほうが手厚い
神戸市には、解体に使える制度が他にもあります。自分の家の場所によっては、そちらのほうが金額が大きくなります。
| 制度 | 対象 | 補助額(令和8年度) |
|---|---|---|
| 老朽空家等解体補助制度 | 市内全域。1986年12月31日以前の腐朽・破損のある空き家 | 床面積に応じ20〜60万円(共同住宅等は70〜100万円) |
| 密集市街地建物除却事業 | 密集市街地再生優先地区(灘北西部・兵庫北部・長田南部・東垂水)。1981年5月31日以前着工の木造建築物 | 除却費用の3分の2、上限は戸建128万円・集合住宅256万円など |
| 六甲山系の老朽家屋等解体補助制度 | 瀬戸内海国立公園六甲地域(神戸市内)等から目視で確認できる範囲の、腐朽・破損のある家屋等 | 1件につき上限350万円(補助率10分の10) |
密集市街地建物除却事業は、灘北西部・兵庫北部・長田南部・東垂水が対象です。補助率3分の2・戸建上限128万円と、老朽空家等解体補助(最大60万円)より手厚くなります。ただし神戸市は、この2つの併用はできないと明記しています。該当しそうな地区に家がある場合は、どちらで申請するかを先に確かめてください。申請期間は2026年3月2日から2027年1月12日まで、窓口は同じすまいるネット(電話078-647-9933)です。
六甲山系の老朽家屋等解体補助制度は、登山者の安全確保と景観向上を目的とした別枠の制度で、補助率10分の10・上限350万円と性格がまったく違います。対象は瀬戸内海国立公園六甲地域(神戸市内)または主要登山道(布引道・青谷道・上野道・大師道)沿いから目視で確認できる範囲にある建物等です。**申請期限は2026年12月11日(金)**と老朽空家等解体補助より早く、解体工事業者は原則として神戸市内に本社がある事業者が対象とされています。
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解体を決める前に、現況のまま売れるかを確かめる
神戸市の住宅地は、六甲山系の裾野に広がる斜面地や、区画の細かい密集市街地を多く含みます。こうした敷地では、更地にしたからといって売りやすくなるとは限りません。擁壁のある土地や接道が狭い土地では、買い手が新築を建てにくく、更地のほうが用途が限られてしまうことがあります。
さらに、建物を解体して更地にすると、土地にかかっていた固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなり、税負担が上がります。補助金で解体費の一部がまかなえても、売れない期間が延びればその分を負担し続けることになります。くわしくは空き家を放置したときの固定資産税のリスクで解説しています。
判断の順番としては、①現況のまま売った場合の価格を把握する → ②解体費の見積もりから補助額を引いた実質負担を出す → ③更地にした場合の売りやすさと税負担を見込む、という流れで比べると、数字で決められます。兵庫県内の他の市町の相場は兵庫県の空き家売却ガイドから確認できます。
よくある質問
Q. 補助額は解体費の何割ですか?
A. 割合では決まりません。神戸市の老朽空家等解体補助は、登記床面積または課税床面積に応じた定額です(一般の建物で20〜60万円、3戸以上の共同住宅・寄宿舎で100㎡以上なら70〜100万円)。ただし、補助対象事業費を上回る場合は補助対象事業費が上限になります。
Q. 昭和58年に建てた家ですが対象になりますか?
A. 1986年(昭和61年)12月31日以前に建てられた建物であれば、建築時期の要件は満たします。あわせて、屋根・外壁・基礎などに腐朽や破損が目視で確認できることが必要です。古い情報には基準を1981年5月31日とするものがあるので注意してください。
Q. 庭の木や古いブロック塀は残せませんか?
A. 原則として、空き家本体に加えて敷地内の附属建物、道に面する門・塀類、車庫・カーポート、立木竹等を全て解体除却することが条件です。安全上やむを得ない場合などの例外はあるため、残したいものがあるときは申請前にすまいるネットへ相談してください。
Q. 先に解体業者を決めて契約してもいいですか?
A. いけません。補助金の交付決定を受ける前に業者と契約したり工事に着手したりすると、補助を受けられません。まずすまいるネットの専用ダイヤル(078-647-9969)で予約を取り、申請の手続きから進めてください。
まとめ
- 神戸市の老朽空家等解体補助は、床面積に応じた定額(一般20〜60万円、3戸以上の共同住宅等は70〜100万円。令和8年度)
- 対象は1986年(昭和61年)12月31日以前に建てられた、腐朽・破損のある空き家。旧耐震の1981年より一回り広い
- 国交省データでは、神戸市9区の取引のうち1986年以前築は35.1%。1981年以前(29.7%)より5.4ポイント多い
- 門・塀・カーポート・立木竹まで全て解体するのが条件。補助額は面積で固定なので、増えた工事費は自己負担になる
- 交付決定前の契約・着工は補助の対象外。申請は2027年1月12日までだが、2026年9月末時点で予算の64%に達しており先着順
- 灘北西部・兵庫北部・長田南部・東垂水なら密集市街地建物除却事業(3分の2・戸建128万円)のほうが手厚い。併用は不可
- 斜面地や接道の狭い敷地では更地が売りやすいとは限らない。解体前に現況のままの価格を確かめておきたい
制度の適用可否や必要書類は、すまいるネットの窓口で確認できます。個別の税の扱いは税務署や税理士、相続登記や権利関係は司法書士にご確認ください。