「兵庫県の田舎にある実家が空き家になっている。県の補助金で直して使えるなら残したいが、売ったほうがいいのかもしれない」
兵庫県には、空き家を住宅・事業所・地域交流拠点として使うための改修費を補助する空き家活用支援事業があります。ただし、使える地域は限られており、補助を受けると**改修後10年以上は活用を続けること(転売不可)**が条件になります。また、兵庫県の公式ページ(2026年10月20日更新)によると、令和8年度の本事業は予算上限に達したため受付を終了しています。
この記事では、兵庫県の公式情報をもとに制度の中身を整理したうえで、国土交通省の取引データを使って「直して使う」と「売る」をどう比べるかを考えます。
兵庫県の空き家活用支援事業とは
一戸建ての空き家や共同住宅の空き住戸を、住宅・事業所・地域交流拠点として活用するために改修するとき、改修工事費の一部を県が補助する制度です。補助の種別は大きく3つあります。
| 種別 | 主な使い方 | 備考 |
|---|---|---|
| 住宅型 | 住宅として使う(賃貸も可)、若年・子育て世帯やUJIターン世帯の自宅、学生シェアハウスなど | 若年・子育て世帯タイプ、UJIターン世帯タイプは空き家の所有が要件 |
| 事業所型 | 事業所として使う(賃貸も可)、県外からの1件目の事業所など | UJIターンタイプは空き家の所有が要件 |
| 地域交流拠点型 | ワーケーション施設、コワーキングスペースなど | 一部の用途は市町長の推薦が必要 |
申請の窓口は県ではなく、空き家がある市町の空き家担当窓口です。
対象になる地域:神戸・姫路・尼崎・西宮・明石と市街化区域は原則対象外
この制度でまず確認したいのが地域です。兵庫県の公式ページでは、対象地域を次の両方に当てはまる区域としています。
- 神戸市、姫路市、尼崎市、西宮市、明石市以外の区域
- 市街化区域以外の区域
例外として、姫路市の旧香寺町・安富町・夢前町・家島町の区域は対象になり、姫路市の旧香寺町、加東市の旧滝野町、たつの市の旧新宮町・揖保川町・御津町は市街化区域でも対象です。明石舞子住宅団地の区域(神戸市垂水区・明石市松が丘の一部)は、事業所型と地域交流拠点型だけが対象です。
つまり、この県の補助は都市部ではなく郡部の空き家を想定した制度です。なお県のページには、市街化区域内で県の直接補助を受けられない場合でも、市町の制度で補助を受けられる場合があると書かれています。
対象になる空き家と、見落としやすい条件
対象になる空き家は、次のすべてに当てはまるものです(令和8年度)。
- 一戸建ての空き家、または共同住宅の空き住戸で、申請時点で空き家であること
- 空き家の期間が6か月以上、または空き家バンクに登録されていること
- 築20年以上経過していること
- 台所・浴室・便所の水回り設備のいずれかが10年以上更新されていないこと
- 耐震性能があること(改修後に一定の耐震性を確保する場合も可。県のチラシでは、昭和56年5月31日以前に着工された空き家は申請前に耐震診断が必要とされています)
- 土砂災害特別警戒区域・災害危険区域などにないこと
あわせて、次の条件も押さえておきたいところです。
- 改修後10年以上、住宅等として活用すること。県のページには「転売等はできません」と明記されています
- 交付決定を受けた後に工事請負契約・着工をすること。交付決定前に着工すると補助金は交付されません
- 令和8年度分は、令和9年3月31日までに工事と工事代金の支払いを完了すること
- 改修内容のSNS等での情報発信や広報用資料の提供などが求められる場合があること(補助タイプごとに異なります)
- 市街化調整区域では、原則として都市計画法の許可手続が完了した後でなければ申請できないこと
- 補助金は一時所得として所得税の課税対象になる場合があること
空き家売却に関するご相談は、空き家買取のプロにご相談ください
補助額はいくら?(令和8年度の補助金額一覧表より)
補助額は、改修工事費(対象経費)の額に応じて段階的に決まります。一戸建て住宅の主な区分を抜き出すと次のとおりです。
住宅型(一戸建て)
| 対象経費 | 一般 | 若年・子育て世帯/UJIターン世帯 | 学生シェアハウス |
|---|---|---|---|
| 100万円未満 | 対象外 | 対象外 | 対象外 |
| 100万〜150万円未満 | 40万円 | 60万円 | 60万円 |
| 150万〜200万円未満 | 60万円 | 85万円 | 85万円 |
| 200万〜250万円未満 | 75万円 | 110万円 | 110万円 |
| 250万〜300万円未満 | 90万円 | 135万円 | 135万円 |
| 300万円以上 | 100万円 | 150万円 | 160〜200万円 |
事業所型(一戸建て・一般)は対象経費150万円未満が対象外で、150万〜200万円未満の60万円から、450万円以上の150万円まで7段階です。地域交流拠点型(一戸建て)は100万〜200万円未満の75万円から、1,000万円以上の500万円までです。歴史的景観形成地区の区域や明舞団地の区域などでは、上乗せされた額が設定されています。
住宅型の一般タイプで見ると、改修に300万円かけても補助は100万円が上限です。自己負担は200万円以上残る計算になります。
令和8年度は受付終了。次に動くなら
兵庫県の公式ページによると、令和8年度の申請期間は**令和8年4月13日(月)〜12月25日(金)**の予定でしたが、予算上限に達したため受付を終了しました。県のチラシにも「先着順ですので予算上限に達し次第終了します」とあります。
窓口となる市町の側でも、たとえば洲本市の公式ページで令和8年度の県事業の受付終了が案内されています。年度の途中で締め切られることがある制度なので、使いたい場合は、年度が替わる前から市町の窓口に相談し、見積もりや書類を整えておくのが現実的です。
ただし、翌年度に同じ内容で実施されるかどうかは、県の公表を待つ必要があります。令和9年度の制度内容は、現時点では公式に示されていません。
データで見る:都市部から離れた地域の家の値段
ここからが「直して使うか、売るか」の判断材料です。国土交通省「不動産取引価格情報」の2021〜2025年のデータで、神戸・阪神・姫路の都市部から離れた18市町(但馬・丹波・西播磨・淡路・北播磨など)と、県の補助の対象外である5市(神戸市・姫路市・尼崎市・西宮市・明石市)の一戸建て取引を比べました。
| 地域 | 取引件数 | 価格の中央値 | 1,000万円以下の割合 | 500万円以下の割合 |
|---|---|---|---|---|
| 18市町(郡部など) | 1,435件 | 550万円 | 71% | 47% |
| 5市(対象外の都市部) | 9,785件 | 2,700万円 | 24% | 13% |
※18市町:豊岡市、丹波市、丹波篠山市、宍粟市、朝来市、養父市、淡路市、南あわじ市、洲本市、多可町、佐用町、香美町、新温泉町、神河町、市川町、上郡町、西脇市、加西市。県の補助の対象地域と完全に一致するわけではありません。
18市町では、一戸建ての半数近くが500万円以下で取引されています。たとえば豊岡市の中央値は505万円、丹波市は550万円でした。
ここに、住宅型一般で上限の補助(100万円)を受けるための300万円規模の改修を重ねると、改修費が家そのものの相場の半分以上になることも珍しくありません。しかも補助を受ければ、改修後10年以上は使い続ける必要があり、途中で売ることはできません。
直して使う・売る、どう比べるか
判断のポイントは「10年以上、自分(または借り手)が確実に使うかどうか」です。
直して使う(補助を使う)のが向いているケース
- 自分や家族が移住・定住して住む予定がある(若年・子育て世帯、UJIターン世帯は補助額も大きい)
- 事業所や地域の拠点として、10年以上使う具体的な計画がある
- 借り手の目途があり、賃貸で10年以上回せる見込みがある
売るのが向いているケース
- 使う予定がはっきりしない、または10年先まで持ち続けられるか分からない
- 改修費の自己負担(数百万円)を、相場が数百万円の家にかけることに抵抗がある
- 相続した家で、管理や固定資産税の負担を早く手放したい
売る場合は、改修せずに現況のまま売るのが基本です。相場の低い地域では、改修費をかけても売値に上乗せしきれないことが多いためです。仲介で買主を探すか、現況のまま買い取る事業者に売るかの違いは空き家買取の相場と仲介との違いで解説しています。貸すことを考えている場合は売るか貸すかを比べる空き家の賃貸ガイドも参考になります。
なお、県の補助の対象要件のひとつに「空き家バンクへの登録」があります。空き家バンクは売却・賃貸の募集にも使える仕組みなので、空き家バンクの使い方もあわせて確認しておくと、補助を使う場合・売る場合のどちらにも役立ちます。神戸市内の空き家であれば、県の活用支援の対象外ですが、市の老朽空家等解体補助制度があります。
空き家売却に関するご相談は、空き家買取のプロにご相談ください
よくある質問
Q. 兵庫県の空き家補助金は今から申請できますか?
A. 令和8年度の空き家活用支援事業は、予算上限に達したため受付を終了しています(兵庫県公式ページ、2026年10月20日更新)。翌年度の実施や内容は県の公表を待つ必要があります。市町によっては独自の補助制度があるため、空き家がある市町の窓口に確認してください。
Q. 神戸市や西宮市の空き家でも使えますか?
A. 神戸市・姫路市・尼崎市・西宮市・明石市の区域と、市街化区域は原則として対象外です(姫路市の旧香寺町・安富町・夢前町・家島町の区域など、一部に例外があります)。市街化区域では、市町独自の制度で補助を受けられる場合があります。
Q. 補助を受けて改修した家を、数年後に売れますか?
A. 兵庫県の公式ページでは、本事業で改修した建物は事業終了後10年以上活用する必要があり、転売等はできないとされています。数年以内に売る可能性があるなら、補助を使わずに現況のまま売る方法と比べて判断してください。
Q. 補助金をもらうと税金はかかりますか?
A. 兵庫県は、本補助金が一時所得として所得税の課税対象になる場合があるとしています。国庫補助金等に係る総所得不算入の申告も含め、税務署や税理士に確認してください。
まとめ
- 兵庫県の空き家活用支援事業は、空き家を住宅・事業所・地域交流拠点に改修する費用を補助する制度(令和8年度)
- 対象は神戸・姫路・尼崎・西宮・明石以外で、市街化区域以外の区域が原則。築20年以上、空き家6か月以上または空き家バンク登録、水回り10年以上未更新などの要件がある
- 補助額は対象経費に応じた段階制。一戸建ての住宅型一般は最大100万円、若年・子育て世帯/UJIターン世帯は最大150万円、地域交流拠点型は最大500万円
- 改修後10年以上の活用が条件で、転売はできない。交付決定前の契約・着工は対象外
- 令和8年度は予算上限に達して受付終了。年度途中で締め切られる先着順の制度
- 国交省データでは、郡部など18市町の一戸建ての中央値は550万円、半数近くが500万円以下。使う予定がはっきりしないなら、改修せず現況のまま売る選択肢と比べたい
制度の詳細と翌年度の情報は、兵庫県と空き家がある市町の窓口で確認できます。補助金の税務上の扱いは税務署や税理士、相続登記は司法書士にご相談ください。