空き家処分の基礎知識

京町家・路地奥の家を売るときの注意点|解体の1年前届出と再建築の可否

「京都の実家が京町家で、路地の奥にある。売りたいが、解体に届出が要ると聞いた。そもそも建て替えはできるのか」

京町家の売却には、ふつうの中古住宅にはない確認事項が2つあります。京都市の条例にもとづく解体の事前届出と、路地(細街路)に面する敷地の再建築の可否です。どちらも知らずに話を進めると、買主との間で前提が崩れます。

一方で、令和6年4月の政令改正で路地奥の京町家でも大規模修繕ができる認定制度が設けられました。「建て替えられないから価値がない」とは言い切れない状況になっています。この記事では、京都市の公式情報をもとに、売る前に確かめることを整理します。


京町家とは何か、そしてどれだけ減ったか

京都市は平成29年11月に「京都市京町家の保全及び継承に関する条例」を制定しました。条例でいう京町家は、建築基準法の施行の際(昭和25年)に現に存した木造の建築物であって、伝統的な構造と、都市生活の中から生み出された形態意匠を有するものを指します。

築年数が古いだけでは京町家ではなく、昭和25年より前から建っていることが出発点です。自分の家が該当するかどうかは、まずここで決まります。

京都市が国土交通省に提出した資料(令和4年11月)によると、市内の京町家は次のように減っています。

調査京町家の軒数うち空き家
平成20・21年度4万7,735軒5,002軒
平成28年度4万146軒5,834軒

※平成28年度「京町家まちづくり調査に係る追跡調査」による。調査不能物件など1,987軒を除く。

7年間で5,602軒・年約1.7%のペースで減り、その一方で空き家は増えています。条例が作られた背景は、この「減少に歯止めが掛かっていない」状況でした。

指定された京町家は、解体の1年前までに届出が必要

条例の中心は、解体の事前届出制度です。仕組みは2段階に分かれています。

対象届出のタイミング位置づけ
すべての京町家解体着手前努力義務
市が指定した京町家解体着手の1年前まで義務

指定には、個別の建物を指定する個別指定と、京町家が集積している区域を指定する地区指定があります。京都市の資料では、令和4年10月末時点で個別指定1,243軒、地区指定17地区でした。

ここが売却で効いてきます。指定された京町家を買主が解体する前提で売る場合、契約から解体着工まで1年以上の見込みが必要になります。更地での引渡しを求める買主とは、そもそも日程が合いません。自分の家が指定されているかどうかは、売り出す前に京都市に確認しておきたいところです。

なお京都市には、指定された京町家向けの指定京町家改修補助金と個別指定京町家維持修繕補助金があります。補助率や上限額は年度によって変わるため、金額は京都市の公式ページで最新のものを確認してください。

空き家売却に関するご相談は、空き家買取のプロにご相談ください

空き家買取のプロにご相談の場合はこちら

路地奥の京町家が建て替えられない理由

もうひとつの論点が、敷地が面している道です。京都市の説明では、建築基準法上の道路に2m以上接していない敷地には、原則として建築物を建てることができません(都市計画区域内および準都市計画区域内)。

京都市は建築基準法上の道路の種別を次のように整理しています。

種別内容
42条2項道路基準時において現に建築物が立ち並んでいる幅員1.8m以上4m未満の道で、京都市長が指定したもの
42条3項道路2項道路のうち、個別に水平距離(道路の中心線から道路境界線までの距離)の指定を受けたもの
非道路上記に該当せず、建築基準法上の道路ではないと判定されたもの
未判定現地に道の形態はあるが、道路種別が示されていないもの

ここでいう基準時は、京都市の大部分の区域で昭和25年11月23日です(旧大枝村の区域は昭和25年12月1日、旧京北町大字広河原および旧大原野の区域は昭和32年5月7日)。

京町家が面している路地は、幅員1.8m未満であることも多く、その場合は2項道路になりません。判定が「非道路」であれば、その敷地は原則として建て替えができないことになります。

非道路にのみ接する敷地について、京都市は次の手段を案内しています。

  • 建築基準法43条の認定・許可
  • 連担建築物設計制度(袋路再生)
  • 非道路を道路化する手法として、既存の道の位置指定道路化、路地のある町並みを再生するための道路指定制度

まず確かめるべきは、自分の家の前の道がどの種別かです。京都市は建築基準法上の道路種別を指定道路図として公開しており、インターネットで閲覧・出力できます。なお京都市は、令和8年5月18日から窓口システムでの写しの交付を廃止し、原則インターネットでの確認を求めています。再建築不可そのものの一般的な考え方は再建築不可物件の出口戦略にまとめています。

令和6年4月から「直して使う」道が広がった

ここが近年いちばん大きな変化です。令和6年4月1日付の政令改正により、接道規定について認定制度(建築基準法施行令第137条の12第6項)が設けられました。京都市はこれを受け、基準時から存在する京町家について認定基準を定めています(京都市都市計画局建築指導部建築指導課、令和6年4月)。

対象になるのは、路地奥の次の2パターンの敷地です。

  • パターン①:非道路(路地・通路)のみに面している敷地
  • パターン②:道路には接しているが、接する長さが2m未満の敷地

認定の主な基準は次のとおりです。

区分内容
通路・接道パターン①は幅員0.9m以上の通路に接していること(建築基準法上の道路に接続していること)。パターン②は道路に0.9m以上接していること
通行上の支障表札門等を除き、通行上支障のあるものがないこと
上空けらば・軒先等の軽微な突出を除き、上空に建築物・工作物がないこと(耐震・防火改修したものを除く)
用途基準時と同じ用途、専用住宅、または用途変更後に利用者の増加が見込まれないもの
防火上の措置出火抑制、早期確知、初期消火の対策(漏電ブレーカー、感震ブレーカー、住宅用防災警報機器、消火器の設置等)
地震への措置耐震診断を実施し、部材の健全化その他の必要な措置を計画的に実施すること

京都市の案内では「専用住宅であれば、認定可能です」とされており、耐震・防火改修をすればトンネル路地も残すことができると明記されています。手続は事前相談 → 認定申請 → 認定の流れです。

重要なのは、これが「建て替え(新築)」ではなく大規模修繕・模様替を可能にする制度だという点です。つまり京町家の出口は、更地にして建て替えるのではなく、建物を残して直して使う方向に制度が寄っています。売却の場面でも、買主は「壊して建てる人」ではなく「直して使う人」が中心になります。

空き家売却に関するご相談は、空き家買取のプロにご相談ください

空き家買取のプロにご相談の場合はこちら

データで見る:京町家は中古市場にほとんど出てこない

国土交通省「不動産取引価格情報」の2021〜2025年のデータで、京都市11区の一戸建て(土地と建物)の取引を集計しました。取引は計5,100件、価格の中央値は2,400万円です。

このうち建築年が記録されている4,266件を見ると、**昭和25年(1950年)以前に建てられたと分かる取引は41件、全体の約1.0%**にとどまります(建築年が「戦前」と記録されたものを含む)。

つまり、京町家に当たりうる築年の家は、一般の中古住宅市場にはほとんど出てきません。相場表から「築何年ならいくら」と当てはめることが難しく、個別に見るしかない物件だということです。

区ごとの価格帯には差があります。東山区は中央値1,700万円で1,000万円以下の取引が36%、上京区は中央値2,500万円で1,000万円以下が26%です。古い家が低い価格帯でも動いている一方、立地によって幅が大きいことが分かります。

同じ関西で、隣戸と壁を共有する住まいの売り方は大阪の長屋(連棟住宅)を売る方法でも扱っています。また京都市では空き家税(非居住住宅利活用促進税)の課税開始が予定されており、持ち続ける場合のコストは京都市の空き家税の対象と税額で確認できます。

売る前に確かめる3つのこと

  1. 条例上の京町家か、指定されているか。 昭和25年より前から存在する木造建築物かどうかがまず出発点です。指定されていれば、解体には着手の1年前までの届出が義務になります。更地渡しを前提にした売却日程は組めません。
  2. 前面の道の種別。 指定道路図で、2項道路・3項道路・非道路・未判定のどれかを確認します。非道路であれば、建て替えは43条の認定・許可や連担建築物設計制度などの検討が必要です。
  3. 接道規定の適用除外認定が使えそうか。 通路の幅が0.9m以上あるか、上空に突出物がないか、専用住宅かといった点が目安になります。使えるなら「直して使う」買主に売れる可能性が広がります。

いずれも最終的な判断は京都市の建築指導課(道路種別・認定)と、まち再生・創造推進室(京町家の指定・届出)の窓口になります。京都府の空き家売却ガイドでは、府内の市町村別の相場も確認できます。

よくある質問

Q. 京町家を解体するには、必ず1年前に届出が必要ですか?
A. 京都市が指定した京町家は、解体着手の1年前までの届出が義務です。指定されていない京町家は、解体着手前の届出が努力義務とされています。自分の家が指定されているかは京都市に確認してください。

Q. 路地の幅が1.5mしかありません。建て替えはできますか?
A. 2項道路は幅員1.8m以上4m未満の道のうち京都市長が指定したものなので、1.8m未満であれば2項道路にはなりません。非道路と判定された場合、建て替えには43条の認定・許可などの検討が必要です。まず指定道路図で種別を確認してください。

Q. 建て替えができない京町家は、修繕もできないのですか?
A. 令和6年4月の政令改正で接道規定の適用除外の認定制度が創設され、京都市は基準時から存在する京町家について認定基準を定めました。幅員0.9m以上の通路に接していることなどの要件を満たし、防火・耐震の措置を講じれば、路地奥でも大規模修繕・模様替ができます。

Q. 京町家は相場表で査定できますか?
A. 難しいのが実情です。国土交通省のデータでは、京都市の一戸建て取引5,100件のうち、昭和25年以前に建てられたと分かるものは約1.0%しかありません。建物の状態、路地の種別、指定の有無で条件が大きく変わるため、個別に見るほかありません。

まとめ

  • 条例上の京町家は、昭和25年(建築基準法施行時)より前から存在する木造建築物で、伝統的な構造と形態意匠を有するもの
  • 京都市の京町家は平成20・21年度の4万7,735軒から平成28年度の4万146軒へ、7年で年約1.7%減少。空き家は逆に増えている
  • 市が指定した京町家は解体着手の1年前までの届出が義務(令和4年10月末時点で個別指定1,243軒・地区指定17地区)。すべての京町家は解体着手前の届出が努力義務
  • 路地が幅員1.8m未満なら2項道路にならず、非道路と判定されれば原則として建て替えできない。まず指定道路図で種別を確認する
  • 令和6年4月の政令改正で接道規定の適用除外認定が創設され、幅員0.9m以上の通路などの要件を満たせば路地奥の京町家でも大規模修繕・模様替が可能になった
  • 国交省データでは京都市の一戸建て取引のうち昭和25年以前築と分かるものは約1.0%。相場表での査定が効きにくく、個別に見る必要がある

制度の適用可否は京都市の窓口で確認できます。相続登記や権利関係は司法書士、税の扱いは税務署や税理士にご相談ください。

参考にした公式情報

関西5府県の空き家買取・無料相談

関西エリアの空き家を、買取のプロに直接ご相談ください

相続した実家・空き家・訳あり物件も、関西5府県の物件に対応する提携の買取業者が秘密厳守で対応します。下記フォームに住所・築年数などをご入力ください。ご相談・査定は完全無料です。

受付対象:大阪府・京都府・兵庫県・奈良県・滋賀県にある物件

完全無料・しつこい営業なし
秘密厳守で対応
相続・訳あり物件もOK
物件について

ご本人・親・相続人など

ご連絡先

ご相談・査定は完全無料です。
ご入力いただいた情報は、空き家の買取・売却のご提案以外の目的には使用しません。